2012年7月29日日曜日

論文が「Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed」に掲載されました

大学院博士後期課程 本田憲胤さんの論文が,胎児・新生児医学分野で著名な英国雑誌である「Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed」に掲載されました。

Effect of therapeutic touch on brain activation of preterm infants in response to sensory punctate stimulus: a near-infrared spectroscopy-based study. 
Noritsugu Honda, Shohei Ohgi, Norihisa Wada, Kek Khee Loo, Yuji Higashimoto, Kanji Fukuda
Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed fetalneonatal-2011-301469Published Online First: 21 July 2012
(http://fn.bmj.com/content/early/2012/07/20/archdischild-2011-301469.abstract)

早産児への不快刺激,特に疼痛刺激は脳の発達障害,そしてそれに起因する発達障害の要因となります。本研究は,早産児の治療やケアにともなう疼痛緩和のための徒手的な包み込み(ホールディング)の効果を,NIRS(光トポグラフィ)などを用いて,脳血流変化などを指標として検討しました。結果から,赤ちゃんをやさしく包み込むことが,前頭前野および感覚運動領域の脳血流増加を軽減させ,脳血流の急激な変化を抑制することが証明されました。このことは,赤ちゃんへの優しい徒手的な包み込みが,児の脳を守り育むケアに,そして将来の発達障害の予防につながる可能性があることを示唆しました。
理学療法開発学では,赤ちゃんから高齢者までを対象として,脳と運動や認知行動についての研究を行っています。ブログでも研究成果を紹介していきますので,ご期待ください。 
大城 昌平

2012年7月22日日曜日

修了生の声 [私なりの理学療法開発学] (喜納)

皆様こんにちは。理学療法開発学 修士課程第3期修了生の喜納です。この度は,私の最近の思いを執筆させて頂きます。

私の大学院での研究テーマは,『痛みと脳』についての関係でした。私は,整形外科に勤務している関係上,痛みを訴える患者と接する機会が非常に多く,痛みの感じ方に個人差があることを不思議に感じていました。「同じ障害部位でも,全く痛くない人もいれば,日常生活が困難になるほど痛がる人もいる,この差は何だ??」そんな臨床的疑問が,私の研究テーマの出発点でした。大学院に入学し,痛みの研究論文を片っぱしから読みあさり,痛みの個人差には,過去の痛み経験,性差,痛みの感作,情動系の神経回路,不安や恐怖などの心理的背景などが影響していると理解したとき,今までの臨床的疑問が,徐々に理解できるようになり嬉しく思いました。さらに,修士研究で,痛みを強く知覚する人は前頭前野の活動も高くなる可能性を示せたことは,私にとって大変貴重な経験となりました。その論文は,「日本物理療法学会会誌」に掲載される予定です。大城先生をはじめ,理学療法開発学の皆様には研究にご協力いただき誠にありがとうございました。この場を借りて,改めて御礼申し上げます。

大学院で学んだ知識や経験は,私の大きな財産となっていますが,卒業後の私のテーマは,その財産をどう臨床研究へ結びつけるかです。臨床研究では治療効果の検討が多くなされていますが,実際の臨床では理学療法士の技術や心のあり方,患者の状態によって,治療効果が全く違ってきます。岡田(2011)は,理学療法という形があるのではなく,現実は担当する理学療法士が,創造的かつ整理された思考を以て,患者と共に創りあげるものであるとしています。私はこの言葉に共感して,原点に立ち返り,一症例を深く考えることを心がけるようになりました。私は研究で示された結果が,どの程度効果があるのかを自分なりに再検討し,その成功・失敗体験を積み重ね,私なりの理学療法を開発していく必要があると考えています。知識を自分の経験に落とし込んでこそ,本当の理解や新たな疑問が生まれるのではないでしょうか。実際,大学院で学んだ論文レビューや統計学の知識を駆使して,症例検討すると今までにないほど多くの新しい気づきが得られます。その新しい気づきから出発し,理学療法のサイエンスに貢献できるように努力していきたいと思います。臨床現場に携わりながら,症例をまとめたり,研究したりすることは決して楽ではありませんが,皆様も自分の立ち位置で,世のため,人のために貢献できる理学療法士を目指していきましょう。

最後に,『奇跡の脳-脳科学者の脳が壊れたとき-』著:J.B.テイラーより,「未来の自分のためなら,今の自分を棄てる覚悟がある」。お勧めの本です。ご一読を!



引用文献: 岡田 亨;理学療法28(1).2011.pp6-10.

喜納 将克 (2011年3月 博士前期課程修了)

2012年7月8日日曜日

理学療法開発学の歓送迎会

7月7日に,理学療法開発学の歓送迎会が開催されました。参加者を代表してM2の鈴木祐介さん,そして新入生を代表してM1の佐野弘毅さんから感想をいただきました。

7月7日七夕,織姫と彦星が1年に1度だけ会うことを許された神秘的な日に,理学療法開発学の歓送迎会が行われました。

昨年度に修士課程を修了された先生方と,今年度から新たに修士・博士課程に御入学された先生方を中心に,在学中の院生やOBの先生方など多くの方々に集まっていただきました。
2時間半という短い時間でしたが,近況報告に始まり,研究や臨床の話,熱い議論など多くの会話が交わされ,とても楽しく有意義な会になったと思います。

私も多くの先生方とお話しをさせていただき,たくさん刺激を受けました。中でも,ある先生が現在の臨床・研究生活についてお話をして下さり,その先生の臨床と研究にかける熱い情熱を強く感じたことが印象に残っています。

私の院生生活もあと1年を切り,修士生活最後の夏を迎えようとしています。
より一層臨床と研究に熱い情熱を傾け,すぐそばに迫っている熱い夏を乗り切っていきたいと思います。
M2 鈴木 祐介

7月7日に行われた歓送迎会では,理学療法開発学領域に携わる多くの先生方のお話を聞く機会を持つことができ,非常に有意義な時間を過ごすことができました。

臨床と大学院生活が始まって早くも3カ月が経ちましたが,まだまだ基礎知識から不足している私にとって,先生方の臨床と研究生活のお話はとても勉強になりました。また,興味のある分野を究めるという素晴らしさと楽しさを感じることができました。

私も先生方のように自分の興味のある分野を熱く楽しく語れるよう,これからの臨床と大学院の日々を精一杯努力していきたいと思いました。今回の歓送迎会に出席させていただき,本当にありがとうございました。 
M1 佐野 弘毅
集合写真

大城教授と2011年度博士前期課程修了生(小松・合田・田中・山下)